東京都心でドローン空撮はできる?必要な許可申請・関係機関調整・安全対策を実務者が解説

「新宿や渋谷のビル群を空撮したいが、他社に断られた」
「空港が近いので難しいと言われた」
そんな理由で、東京都心でのドローン撮影を諦めかけたことはないでしょうか。
結論から言えば、東京都心でのドローン空撮は、条件次第で実施可能です。
ただし、航空法上の許可・承認だけで完結することはほとんどありません。空港周辺の高度制限、第三者上空を避ける運航設計、離発着地の確保、施設管理者の同意、道路・公園・河川・港湾などの利用条件を総合的に確認して、はじめて実施可否を判断できます。
本記事では、これまで多数の難易度の高い案件に対応してきた実務者の視点から、東京都心でドローン撮影を進める際の考え方、必要な確認事項、現場で起こりやすい課題をわかりやすく解説します。
- ✔東京都心でドローン空撮を行う際に必要な主な確認事項
- ✔ 空港周辺、DID地区、道路、公園、河川、港湾などで注意すべきポイント
- ✔都心空撮で本当に重要な「許可取得以外」の実務
- ✔実際の案件で起きやすいトラブルと、その回避策
- ✔業者選びで失敗しないための見極めポイント
1. 結論:東京都心での空撮は「許可・調整・安全運用」の組み合わせが重要
東京都心でドローンを飛ばす際に、よくある誤解が
「国の許可があれば飛ばせる」
「資格があれば都内でも対応できる」
というものです。
しかし、実務ではそれだけでは不十分です。
都心部では、場所や飛行内容によって、以下のような確認が必要になります。
・航空法上の飛行許可・承認の要否
・空港周辺や制限表面に関する確認
・第三者上空を避けるための運航設計
・離発着地の確保と施設管理者の同意
・道路使用の要否や交通への影響確認
・公園、河川、港湾などの管理ルール確認
・重要施設周辺に関する法令確認
・電波環境、GNSS受信状況、周辺構造物の影響確認
つまり、東京都心でのドローン撮影は、「飛ばせるかどうか」ではなく、「どの条件なら安全かつ適法に実施できるか」を一つずつ整理する仕事だと言えます。
2.東京都心で確認すべき主なポイント
東京23区の多くは人口集中地区(DID地区)に該当します。

※都内や神奈川はほぼ人口集中地区(DID)に該当
そのため、地方での空撮と同じ感覚で進めると、途中で計画が止まることが少なくありません。
特に確認が必要になりやすいのは、次のような項目です。
2-1. 航空法上の飛行条件
まず前提となるのが、航空法に基づく飛行条件の確認です。
DID地区での飛行に加え、夜間飛行、目視外飛行、イベント上空に関わる条件、危険物輸送や物件投下の有無など、案件内容によって必要な許可・承認が変わります。
また、都心案件では、許可取得だけでなく、第三者上空を避ける運航設計や立入管理の考え方が非常に重要です。
2-2. 空港周辺・高度制限の確認
羽田空港に近いエリアでは、場所によって高度制限が厳しく設定されていることがあります。
そのため、品川区・大田区・湾岸部などでは、座標と飛行高度をもとに、事前に制限内容を細かく確認する必要があります。
「空港が近いから全面的に不可能」というわけではありませんが、事前確認なしで進めるのは非常に危険です。
2-3. 道路・公園・河川・港湾などの利用条件
都心では、空を飛ばすことだけでなく、どこから離発着するかが大きな問題になります。
たとえば、
・道路を離発着地として使用する
・道路上に機材や補助員を配置する
・都立公園や区立公園を使用する
・河川敷や護岸、港湾施設を使用する
・ビル屋上や私有地を使用する
といった場合には、それぞれ道路管理や施設利用、管理者同意などの確認が必要になることがあります。
法律上の飛行条件を満たしていても、離発着地の確保や管理者同意が取れず、実施できないというケースは珍しくありません。
2-4. 重要施設周辺の法令確認
皇居、国会議事堂、外国公館、防衛関係施設などの周辺では、一般的な空撮案件よりもはるかに慎重な判断が必要です。
これらのエリアでは、航空法だけでなく、小型無人機等飛行禁止法など、別の法令上の制限が関係する場合があります。
一般の撮影目的での飛行は極めて難しいケースもあるため、安易に「許可を取れば飛ばせる」と考えるべきではありません。
実施可否は、対象場所、飛行主体、土地や施設側の権限関係などを含めて個別に確認する必要があります。
【早見表】エリア・場所別の主な確認先と重要ポイント
東京都心で空撮を計画する際、場所によって必要となる主な調整先と確認事項をまとめました。
| 対象エリア・施設 | 主な確認先 | 重要ポイント / 参照URL |
|---|---|---|
| 23区内一般部 (DID地区) | 国土交通省(航空局) | 航空法:無人航空機の飛行ルール 全域が人口集中地区。DIPSでの事前申請が基本となります。 |
| 羽田空港周辺(制限表面) | 東京空港事務所(国交省) | 羽田空港 高さ制限回答システム 座標ごとに制限高度が異なります。1m単位での確認が必須です。 |
| 公道・歩道沿い | 所轄警察署(交通課) | 道路使用許可の手続き(警視庁) 離発着地として使用する場合や補助員配置に道路使用許可が必要です。 |
| 国立公園・国民公園 | 環境省(各管理事務所) | 一例)国営昭和記念公園 ※各公園の公式サイトより要確認。 ドローン飛行は原則禁止(調査・公園PR目的の場合可能な場合あり)または厳格な個別許可が必要な可能性があります。 |
| 都立・区立・児童公園 | 東京都建設局 / 各区役所 | 都立公園での飛行ルール 各自治体の条例により異なります。区立公園は各区への確認が必須です。 |
| 港湾・海上・運河 | 東京都港湾局 / 海上保安庁 | 東京港における運用の手引き 水域利用の届出や船舶交通への配慮、潮風対策が必要です。 |
| 河川・河川敷(河川法) | 国土交通省(各河川事務所・土木管理事務所)/ 各自治体 | 一例)荒川河川利用案内 |
| 鉄道施設・線路周辺 | 各鉄道会社(JR東日本等) | JR東日本(撮影関連確認先) 安全運行のため、事前の飛行共有や調整が必要です。 |
| 自衛隊・米軍施設 | 防衛省 / 各駐屯地 | 確認先一覧 各施設に問い合わせて、対応方法を個別に確認する必要があります。 |
| 重要施設 (官邸・国邸・外国公館) | 警察署、都道府県公安委員会 | 小型無人機等飛行禁止法 |
| マイクロドローン(電波法) | 総務省(総合通信局) | ドローン等に用いられる無線設備(総務省) |
3. 東京都心で本当に難しいのは「許可取得」より「調整」と「現場安全」
都心空撮で本当に難しいのは、申請書を書くことそのものではありません。
実務上の壁になるのは、関係者調整と現場リスクのコントロールです。
3-1. 関係機関との調整が多岐にわたる
案件によっては、航空局だけでなく、次のような相手との調整が必要になります。
・所轄警察署
・空港関係機関
・施設管理者
・公園管理者
・河川管理者(土木管理事務所)
・港湾管理者
・海上保安庁
・鉄道会社
・自衛隊、米軍基地
・電波等、送電設備管理者
・地権者やテナント関係者
・近隣施設や運営会社
特に湾岸エリアや大規模再開発エリアでは、複数の利害関係者が存在するため、
「誰に、何を、どの順番で確認するか」を誤ると、案件が前に進まなくなります。
3-2. 電波環境・GNSS受信・ビル風の影響
都心では、最新機体だから安心とは限りません。
高層建築物が密集するエリアでは、次のようなリスクが発生しやすくなります。
・ビル風や建物周辺の乱気流
・高層建築物による電波遮へい
・反射や構造物の影響によるGNSS受信の乱れ
・金属構造物や送電設備周辺での磁気干渉
・離発着地点の狭さによる安全余裕の不足
このため、都心案件では、機体スペックだけでなく、現場で飛行可否を冷静に判断できる運航経験が重要です。
状況によっては、当日の安全を優先して一部カットを断念する判断も必要になります。
3-3. 第三者上空を避けるための設計が成否を左右する
東京都心では、人通りや車両交通が多いため、単に飛ばす許可を取るだけでは不十分です。
重要なのは、第三者上空を避ける運航経路を組めるか、立入管理ができるか、離発着地を確保できるかです。
この設計が曖昧なまま進めると、許可があっても現場で実施できません。
都心空撮は、申請の知識と操縦技術に加えて、現場全体を設計する視点が必要です。
4. 【実例】東京都心・難所での空撮対応事例

ここでは、都心部で実際に対応した案件の一例をご紹介します。
いずれも、単に「飛ばした」ではなく、制約条件を整理し、安全に実施できる形に落とし込んだ案件です。
事例1:渋谷の再開発エリアでの夜間空撮
ご相談内容
再開発中の建設状況と、周辺の眺望を高精細な素材として記録したいというご依頼でした。
対象エリアは都心部で、人流も多く、夜間運用での安全確保が重要な条件でした。
主な課題
・人口集中地区での夜間飛行に関する整理
・離発着地の安全確保
・周辺環境を踏まえた撮影ポイント設計
・高精細なパノラマ素材と通常映像の両立
対応内容
・飛行条件と必要な許可・承認の確認
・関係者との事前調整
・夜間運用を前提とした安全計画の作成
・撮影目的に合わせた機材選定と飛行ルート設計
・再現性の高い撮影ポイントの設定
結果
高解像度のパノラマ素材と映像素材を納品し、再開発プロジェクトの記録・可視化に活用いただきました。
現場で苦労した点
夜間飛行は、昼間に比べて視認性や安全管理の負荷が大きくなります。
都心部では周辺環境の変化も早いため、書類面の整理に加えて、当日の現場判断が重要でした。

事例2:東京湾エリアでの夜間・海上撮影
ご相談内容
東京湾で、船舶と夜景を組み合わせた映像を撮影したいという案件でした。
動く船上での運用を含むため、通常の地上離発着より難易度が高い条件でした。
主な課題
・海上での離発着と安全管理
・湾岸エリア特有の風の影響
・船舶交通への配慮
・夜間撮影と空港周辺条件の確認
対応内容
・港湾管理者や海上保安庁、空港関係機関、所轄警察署などとの事前確認
・関係船舶との情報共有
・当日の風況、航行状況、離発着条件を踏まえた運用計画の作成
・リアルタイム連携を前提とした安全管理体制の構築
結果
夜景と被写体の動きを両立した映像素材を確保し、作品の世界観に沿った映像制作に貢献しました。
現場で苦労した点
海上では、潮風や飛沫、突風、船体の揺れなど、陸上とは異なる条件が重なります。
現場では安全を最優先し、一部の低空カットを見送る判断を行いました。

事例3:新宿・歌舞伎町での作画資料用空撮
ご相談内容
マンガ制作の参考資料として、新宿・歌舞伎町の街並みを立体的に把握できる素材がほしいというご依頼でした。
主な課題
・人口集中地区での安全配慮
・繁華街特有の人流への対応
・ビル壁面や街路の奥行きがわかる構図の確保
・離発着地点の選定
対応内容
・許可条件の整理と事前調整
・人流や周辺環境を踏まえた時間帯選定
・離発着地点の確保と安全管理
・俯瞰だけでなく、壁面や街路の奥行きが伝わる斜俯角中心の構図設計
結果
作画資料として使いやすい、街の立体感や距離感が把握できる素材を撮影できました。
現場で苦労した点
当初候補としていた離発着地点の近くで磁気干渉の懸念があったため、位置を見直し、干渉の少ない地点に変更してセンサー状態を再確認したうえで運用しました。

5. 失敗しないために:「やらなくていいこと」と注意点
東京都心で初めてドローン撮影を検討する担当者の方ほど、真面目に準備しようとして遠回りしてしまうことがあります。
ここでは、実務上あまりおすすめしない進め方をまとめます。
5-1. いきなり自社だけで申請書類を書き始める
都心案件では、申請そのものよりも、
「この場所で何が必要か」
「そもそもこの運用設計で実施可能か」
の判断が重要です。
必要な整理をせずに書類作成から始めると、途中で計画を作り直すことになり、かえって時間がかかります。
5-2. 価格だけで業者を選ぶ
東京都心の撮影では、保険、安全管理、補助員体制、事前調整など、表に見えにくいコストが発生します。
価格だけを見て依頼すると、必要な確認や安全対策が不十分なまま進むリスクがあります。
大切なのは、安いかどうかではなく、何を含んだ見積もりかです。
5-3. 「最短ですぐ飛ばせます」をそのまま信じる
条件が単純な案件であれば短期間で対応できることもあります。
ただし、都心の公道沿い、湾岸、再開発地区、重要施設周辺などは、事前調整に時間を要する場合があります。
案件によっては、数日ではなく、数週間単位での準備が必要になることもあります。
5-4. 最新機体なら安心だと思い込む
都心空撮では、最新機体よりも、
・現場でのリスク判断
・飛行を見送る判断
・第三者管理の考え方
・離発着地の設計
のほうが重要です。
機体性能だけで都心案件の安全性が担保されるわけではありません。
6. よくある質問(FAQ)

Q1. 皇居や国会議事堂の近くでドローンを飛ばすことはできますか?
一般の撮影目的では、非常にハードルが高いエリアです。
これらの周辺では、航空法だけでなく、小型無人機等飛行禁止法など、別の法令上の制限が関係する場合があります。
実施可否は、場所、目的、飛行主体、施設や土地の権限関係などによって異なるため、安易に「許可を取れば飛ばせる」とは言えません。
まずは個別案件として確認することをおすすめします。
具体的な禁止エリアの確認方法や、警察への申請フローについては、下記の解説記事で詳しくご紹介しています。
【2026年最新】皇居周辺でドローンは飛ばせる?「小型無人機等飛行禁止法」の申請方法をプロが解説
Q2. 撮影中に警察官に声をかけられた場合はどうすればよいですか?
その場で飛行内容を説明できる担当者を置き、必要な資料をすぐ提示できる状態にしておくことが大切です。
案件によっては、飛行に関する許可・承認書類、施設管理者の同意書、道路使用に関する書類、運用計画書などを携行しておくとスムーズです。
弊社では、現場での混乱を防ぐため、必要に応じて事前調整と当日の説明体制を整えたうえで運用しています。
Q3. 羽田空港が近いエリアは全面的に飛行できませんか?
全面禁止というわけではありません。
ただし、場所によっては高度制限が厳しく、通常の想定よりかなり低い高度までしか運用できない場合があります。
そのため、座標と飛行高度をもとに制限内容を確認し、必要に応じて空港関係機関との事前調整を行うことが重要です。
Q4. 警察や施設管理者、地権者への調整は業者に依頼できますか?
案件内容によっては、業者側で進められる部分と、お客様のご協力が必要な部分があります。
たとえば、施設利用に関する調整や、申請名義に関わる書類などは、お客様情報が必要になることがあります。
弊社では、案件内容を確認したうえで、どこまで一括対応できるかを事前にご案内しています。
Q5. 万が一の事故に備えて、どのような補償や安全対策がありますか?
弊社では、賠償責任保険(最大15億円の損害保険)への加入を前提に、案件内容に応じた安全対策をご提案しています。
また、都心案件では、補助員配置、立入管理、機体選定、離発着方法、必要に応じた追加安全装備の検討など、撮影内容に応じた運用体制を構築します。
補償内容や安全対策の詳細は、案件ごとにご案内可能です。
7. まとめ:東京都心の空撮は「技術」と「調整力」と「安全設計」の総合力で決まる
東京都心でのドローン撮影や点検は、決して一律に不可能ではありません。
一方で、地方や郊外と同じ感覚で進めると、法令面、管理面、安全面のどこかで行き詰まります。
都心空撮で重要なのは、
どこに相談すべきかを把握していること、
第三者上空を避ける運航設計ができること、
現場で飛行可否を正しく判断できること
の3点です。
もし、
「他社に難しいと言われた」
「空港が近くて判断がつかない」
「法令面と安全面を含めて相談したい」
という案件があれば、まずは一度ご相談ください。
私たちは、単にドローンを飛ばすのではなく、
どうすれば合法的に、安全に、目的に合った撮影を実現できるかを実務ベースでご提案します。
東京都心でのドローン撮影をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。
※ドローン関連法令や各施設の運用ルールは変更される場合があります。実施可否は、国土交通省航空局、警察、施設管理者などの最新情報を前提に個別確認してください。